愛俐のフリー台本

フリー台本になります。声劇や演劇向けの台本を書いています。(作品を見聞きせてくださると個人的にとっても嬉しいです)※強制ではありません

月に一度のお買い物会〜女子のわちゃわちゃお買い物時間〜

 

仲良しの友人(女性同士)二人でのショッピングの時の会話です。

 

f:id:morimorimory:20190112222006j:plain

 

配役:マリナナ
人数:女性二人(メイン)
合計:女性二名
予想時間:約1分
 

 

タイム・アフター・タイム

タイム・アフター・タイム

  • チェット・ベイカー
  • ジャズ
  • ¥150
  • provided courtesy of iTunes

 

 

「これ似合う〜!」 

 

「そうかなー? ナナが言うのなら似合うのかも」 

 

「うんうん、いいと思うよ〜」 

 

「試着してくるっ」

 

「はーい」

 

・・・

 

「どう?」

 

 

(シャッ)

カーテンの開く音

 

 

「ああー…」

 

「だよ…ね」

 

「ちょっと待ってて!」

 

・・・

 

「こっちの色はどう?」

 

「あっ、さっき迷ってたやつね! 着てみる」

 

・・・

 

「どう!?」

 

 

(シャッ)

カーテンの開く音

 

 

「いい!!」

 

「やっぱり!?」

 

・・・

 

「今日はありがとう〜。ナナのおかげでいい買い物できたよ〜」

 

「えへへ、良かった〜。やっぱり私がマリのこと一番わかってるね!」

 

「う〜ん、まっそういうことにしてあげる」

 

「なにそれ」

 

 

 

 

 

artry.hatenablog.com

 

 

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愛俐のフリー台本のお願いと使い方

 

愛俐のフリー台本をご覧いただき、ありがとうございます。

 

 

ここでは、愛俐のフリー台本を使う際のお願いと愛俐のフリー台本の使い方についてのご説明をさせて頂きます。

 

 

f:id:morimorimory:20181105001407j:plain

 

 

 

 

お願い

 

著作権は放棄しておりません。

 

転載はご遠慮願います。

 

 

出来ればのお願い

 

声劇や演劇向けの台本を書いています。

 

できれば作品を見聞きさせてくださると個人的にとっても嬉しいです。

 

ツイキャス・YouTube・ニコニコ動画に残した時はもちろん。

 

生配信中に読む予定であれば、Twitterからお誘いください。

 

ぜひ、タイミングがあれば聴きに行きたいです。

 

強制ではありません!

 

ご自由にお使い下さいませ。

 

 

使い方

 

お待たせしました。

 

さっそく、使い方です。

 

 

小さい()カッコ

 

愛俐のフリー台本では、

 

台詞の前に小さいカッコが出現します。

 

例えば、

 

(笑いながら)

「うん!明日が楽しみだね」

 

↑ このように、イメージが膨らみやすいカッコを書いています。

 

このような表現は、自由です!

 

どのように読んでいただいても構いません。

 

イメージが膨らみやすくなれば良いなと思っております。

 

 

BGMや効果音

 

例えば、

 

(キーンコーンカーコン)  

学校のチャイム / ウェストミンスターの鐘

学校のチャイム / ウェストミンスターの鐘

  • SC-Mirai
  • インストゥルメンタル
  • ¥150
  • provided courtesy of iTunes

 

これに関しても、イメージです。

 

これは、iTunes(アイチューンズ)から引っ張っております。

 

▶︎ を押せば、再生はされますが、このまま使用はしないでください。

 

著作権に触れてしまう恐れがあります。

 

練習として、再生する分には構いませんが、本番ではやめてください。

 

BGMについても同じです

 

 

 

全ては、“イメージのため”ということを忘れないようにしてください。

 

 

 

間について

 

間に関しては、自由です。

 

 

 

 

何か質問があれば、コメント・ツイッターからお願い致します!

 

 

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幸せの象徴〜対義物語〜

 

アリサはいつも幸せだった。

 

慕ってくれる親友のユイ。

 

愛してくれる彼氏のカイト

 

すべてが順風満帆。

 

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しかしそれすべてが

 

偽りだったら?

 

 

 

配役:アリサユイカイト
人数:女性二人(メイン)男性一人(サブ)
合計:男女三名
予想時間:15分
 
 
 
(使用したら聞かせてくれると、嬉しいです)※強制ではありません
 
 
 

twitter.com

  

 

 

 

私はいつも好きな人の中心にいた。

 

明るく元気な友達に慕われ

 

大好きな親友とも仲良く

 

私を愛してくれる彼氏もいる。

 

まさに最高の幸せな日常。

 

 

「私、今とっても幸せなの。これ以上ないくらい」

 

 

最近、毎日言ってるね」

 

 

「えーカイトもでしょ?」

 

 

「まぁな」

 

 

「まーたイチャイチャしてる」

 

 

「アリサが幸せなんだって」 

 

 

「へー。ノロケかー?このこの〜」

 

 

「からかわないでよ〜」

 

 

でもそれもこの会話も、すごく幸せな時間。

 

そうずっと変わらない。

 

変わったことと言えば、付き合いだした頃より少し距離を感じることだ。

 

まぁ、もう半年たつしね。どこのカップルもこんな感じだろう。

 

 

 

 

「今日は珍しくカイトが一緒に帰れないってさ〜

 

約束してるわけじゃないからか、ユイも来なかったしなぁ

 

仕方がない。一人で帰るか〜」

 

 

 

 

「えー!ほんとにー?」

 

 

「ん?聞き覚えのある声だ」

 

 

「あっ、やっぱりユイだ!おーぃ…え隣にいるのは…カイト…?」 

 

 

「まじだって!笑うなよ〜」

 

 

「カイト!ユイ」

 

 

「え?あっ!アリサ…」

 

 

「びっくりしたー!」

 

 

 

「なに…その反応…二人でなんでっ…」

 

 

「二人でアリサの誕プレ買ってたんだよ?」

 

 

「え?誕プレ?」

 

 

(微笑みながら)

「サプライズできなかったなー。明日だろ?」

 

 

「そうだったんだ。なんだー!

 

二人ともありがとう!」

 

 

(笑いながら)

「うん!明日が楽しみだね」

 

 

「私よりユイが嬉しそう」

 

 

「ほんとユイはアリサが大好きだな」

 

 

 

 

(キーンコーンカーコン)  

学校のチャイム / ウェストミンスターの鐘

学校のチャイム / ウェストミンスターの鐘

  • SC-Mirai
  • インストゥルメンタル
  • ¥150
  • provided courtesy of iTunes

 

 

 

「今日カイトの家集合ね?」

 

 

「わかった!」

 

昨日も今日もカイトから一通もメールが来てない。

 

珍しい…

 

 

「あっそうそう。これ、誕プレ!!」

 

 

「あっいつものだ!今年もありがとう!」

 

 

ユイはいつも、私の誕生日プレゼントに小さなクローバーの花束をくれる。

 

 

これだけは出会った時から欠かさず、いつもくれるプレゼント。

 

 

ユイいわく、私達が出会った時

 

 

近くにクローバーがたくさん咲いていたらしい。

 

 

私は足元なんてみていないから

 

ユイは素敵な女の子だなとこのエピソードを思い出すたびに思う。

 

 

「早く渡したかったの!じゃあまた」

 

 

いつも誕生日当日は一緒にいるし、今日もどこかで落ち合うんだろうなって

 

そう思っていた。

 

 

私は家に一度帰って着替えてから、カイトの家に行くことにした。

 

 

「誕生日の時ぐらいとびっきりのお洒落をしなきゃね!」

 

 

着替えてる途中にふと、父の読んでいる新聞に目がいった。

 

 

そこにはいろいろな特集が載っている。

 

 

「花特集?」

 

 

一番隅っこにあった花の特集に目が止まった。

 

 

「クローバーあるかなー?」

 

 

『クローバーとは…』

 

 

「あったあった」

 

 

『クローバーとはマメ科の~で花言葉は幸せ。または

 

 

「へー。初めて知った。幸せかぁ

 

 

ユイ、ちゃんとそういう言葉も考えてくれてるのな?

 

あともう一つの花言葉は…」

 

 

(♪♪♪~~~)

 

 

「わっなんだ電話か。やばいっ時間こんなに経ってたの〜」

 

 

「もしもし?」

 

 

「今、どこにいるの」

 

 

あれ、怒ってる…いつもより低い声。

 

 

「ごっごめんね。もう出るね」

 

 

急いで荷物を用意して外に出る。

 

 

そういえばクローバーのもう一つの花言葉。

 

 

…なんだったんだろう。

 

 

カイトの家に着くと誰もいない。

 

 

「え〜もう、誰もいないの〜」

 

 

 

「もう終わりにしようよ!!」

 

 

屋上の方から?…ユイの声?

恐る恐る行くと、そこにはカイトとユイ。

 

「カイ‥」

 

 

「なんで今更!俺はお前の方が好きなんだよ」

 

 

「え‥」

 

 

どういうこと?今、カイトがユイを好きって。

 

 

「あっ…アリサ…」

 

 

ユイが目を見開いて気まずい顔をする。 

え、なんでどうして。私の頭の中はパニックになった。

 

 

その怒りの矛先はユイへと向かった。

 

 

「ちょっときて」

 

 

「おい!!俺が悪いんだ。ユイは悪くない」

 

 

「私は大丈夫。私も話したいの」

 

 

「言い訳があるなら聞くよ」

 

 

言い訳…う…」 

ユイが泣く

 

  

低い声で

「……なんてね」

 

 

「親友だって言ってたのに!」

 

 

「あんたを親友だと思った日なんて一度もない

 

やっぱり、あんた、私のこと覚えてないのね」

 

 

「え?」

 

 

「いつも頭空っぽで、幸せそうにただ笑っているだけの女が気づくわけないか〜。あの地味な私から、彼氏を奪った天真爛漫(てんしんらんまん)なアリサちゃん

 

あんたのせいで!あんたのせいで、

 

私の幸せだった中学生活の日々が一瞬で壊れた。

 

あの日のことで毎年あんたのことを思い出す…

 

私の大好きだった彼氏を

 

地味で

あの頃の私でも好きだと言ってくれたあの優しい私の大切な彼を。

 

だから、高校生になったら変わろうと精一杯努力したよ。

 

もうこんな惨めな思いは絶対しないって誓ったから。

 

そしたら、神様って見てくれているんだね…

 

偶然アリサと同じ高校。

 

更にアリサには大事な彼氏もいるって?

 

このチャンスを逃してはいけないと思ったわ

 

あのときの復讐を…。絶対に。

 

だからアリサに気に入られるように明るく良い子ちゃんを演じた。

 

あんたの大好きな大好きなカイトくん?簡単だったよ?

 

待ってたわ、この日を。

 

アリサがやったことと、全く同じことをしてやろうって。

 

このアリサの誕生日まで、ずうっと我慢してきた。

 

わざとカイトの家に呼んで

 

アリサが

 

私とカイトの仲を見つけられるようにね

 

ふざけた言い方で

今日はやっぱり中止にして俺たちの仲をアリサに話そう〜

 

ってカイトはいったけど、それじゃあダメ。

 

アリサが、

 

アリサから、気づかなきゃ意味ない。

 

人は、びっくりすればするほど、印象が頭の中に残るからね

 

あ〜アリサって本当馬鹿だよね

 

クローバー

 

もらって嬉しかった?

 

あれ、私なりのメッセージだったんだけど

 

あはは

 

気づかないよね

 

だって、クローバーって幸せの象徴ってイメージしかみんなないもの」

 

 

「…私に幸せになって欲しくて渡してたんじゃないの……」

 

 

「まだそんなこと言えんの?あんたってそれ本当に天然なの?

 

あんたに幸せになって欲しいなんて思う日なんて来るわけがない。

 

ねぇ、知ってる?

 

もう一つの花言葉は…

 

 

復讐」

 

 

 

 

俺はアリサが本当に大好きで絶対変わることなんてないと思ってた。

 

 

だけど喧嘩が増えていって、

 

嫌なことが多くなって

 

アリサのことを相談していたら

 

いつも近くにいたユイに惹かれてしまっていた。

 

びっくりすることにユイは泣きながら俺に好きだと伝えてくれた。

 

アリサはそこまで俺のことを好きでいてくれているだろうか。

 

その嬉しさのあまりユイを受け入れてしまい

 

アリサを傷つけたくないからと、アリサに隠れながら会ってしまっていた。

 

それは優しさではない。

 

アリサにも悪いし、ユイが可哀想だ。

 

そう思い、俺は早くアリサに別れを告げてユイと正式に付き合いたかった。

 

だけど…

 

 

『待って!!私はまだ、ありさと仲良くしていたいの。

 

今日は、アリサの誕生日だし…もう少しだけ待って』

 

 

そう言ってユイは、アリサに関係を明かそうとしたがらなかった。

 

それだけアリサが大事なのだろう。

 

本当に良い子だな。

 

俺のことが大好きで、優しくて、可愛くて。おしとやかな子。

 

 

だから、びっくりしたんだ

 

 

「あんたを親友なんて思った日なんて一度もない」

 

 

ユイの初めて見る声と顔。

 

 

いつもの笑顔とは違う…

 

憎しみにみちた顔。

 

 

 

「ねぇ、知ってる?

 

もう一つの花言葉は… 復讐

 

あはははははははははははッ」

 

  

(ガンッ足をぶつけた物音)

 

 

「誰!?」

 

 

「いたたた……おい、どういうことだよ」

 

 

「なにこいつ。ずっと聞いてたの?

 

ならわかるでしょ?

 

 

貴方のことなんて最初から好きじゃなーいの。

 

 

利用してたの」

 

 

「おい、俺はお前が本当に好きだったんだよ」

 

 

「うーわっ!!

とうとう目の前にあんなにも大事にしていた彼女がいたのに、そういうこと言っちゃうんだ〜やばいね」

 

 

「もう、こいつとは別れるから…」

  

 

「あーヤダヤダ!!

 

やめてよ本当!

 

あー、もう復讐もしたしじゃあね。さようなら!!」

 

 

 

「ごめんな、アリサ、本当俺、自分でも最低だと思ってる。

 

けど、もうユイが好きなんだよ」

 

 

泣きながら

「うん、もういいよ…私も…悪かったの…」

 

 

「こんなこと俺が聞くのもなんだけど、なんでユイの彼氏を…?」

 

 

「あ…それは…」

 

 

「ごめん!!浮気した俺がこんなこと聞いて良いわけないよな」

 

 

「ううん、聞いて。中学の時、私も浮気をしたの」

 

 

「え…」

 

 

「あはは…今のカイトと同じかもね

 

私も彼氏がいて、だけど、上手くいってなくて

 

相談してたのが、ユイの彼氏だったみたい…」

 

 

「みたい…?」

 

 

「ユイっていう彼女がいるなんてことは知らなかったよ

 

しかも、告白された時に、見ていた女の子がユイだったということも

 

私も彼に心惹かれていたの

 

だから、すぐにその時に付き合っていた彼とはお別れして

 

告白してくれた彼とすぐに付き合った

 

卒業と同時に別れちゃったけどね…」

 

 

「それ、浮気でもないし、アリサがユイの彼氏を取ったわけでもねーじゃん…」

 

 

「ううん、浮気だよ。だって、付き合っている時に心惹かれてしまっていたら、もう私は浮気だと思うよ」

 

 

「う…そうか

 

あ!でもユイに、それ伝えた方がよくね?

 

誤解したままじゃ…」

 

 

「あーあっ!

 

やっぱり、バカだね〜カイト。

 

ハハッ今度はしっかりとした良い女を見つけるんだよ。

 

バイバイ」

 

 

____一年後

 

 

私は、街中で楽しそうに男の子と二人、手を繋いでいるユイを見かけた。

 

高校の時の女の子らしい格好ではなく、

 

中学の時と同じような容姿をしたユイだった。

 

だけど、その笑顔は何も変わっていない可愛いユイの笑顔だった。

 

 

あれから私はユイとは一言も話さず、高校を卒業した。

 

気まずかったけれど、真実を言ってもユイのプライドを傷つけてしまう気がして。

 

なんだか全てが言い訳っぽくなっちゃう気がして何も言えなかった。

 

だから、高校の卒業式。

 

靴箱に手紙を置いて帰ってきた。

 

返事はない。

 

もう元には戻れない。

 

そういうことだ。

 

だけど、私が傷つくのはお門違い。

 

 ユイのことを忘れることはないだろう。

 

 

 

 

卒業式の日、靴箱にアリサからの手紙があった。

 

「今更なに?」

 

捨てよ

 

でも…

 

あ〜めんどくさい

 

考えるのが嫌だったから、机の引き出しに入れて置いた。

 

高校の入学式。

 

あいつらと会うことはない。

 

もう過去に踏ん切りつけなきゃ。

 

「読んですぐに捨ててやろ」

 

  

ユイへ

 

 こんな手紙を書いてごめんなさい

 

 

もう許してくれるとは思っていません

 

だけど、一つだけ言いたいことがあって手紙を書きました。

 

あのね、ユイ

 

私、ユイのこと好きだったよ

 

クローバーをくれた意味が、復讐だったと言うことだとしても

 

毎年、嬉しかった

 

ありがとう

 

これだけ伝えたくて、お手紙を書きました

 

あの楽しかった時間は、私の中では大切な思い出です。

 

ユイ、大好き。

 

アリサより

 

 

泣きながら

な、何これ

 

うざ

 

うざい

 

うざいうざいうざい

 

絶対に忘れないんだから

 

はーあっ、なに泣いてんだろ 

 

これから、本当の親友と彼氏を作ってやる!

 

 

 

 

 全員で

さよなら、そしてまた会えたなら笑って幸せでいられるように

 

 

未来

未来

  • コブクロ
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

 

  

 

 

この物語の作成者:波音

twitter.com

 

編集者:管理人

 

 

 

無修正版は、これから小説としてサイトに掲載されます。

 

興味のある方は飛べるようになったらツイッターから飛べるようにしますので、チェックの方、宜しくお願い致します。

 

 

 

 

羨望~二つの少女の物語~

 

ミドリとサチ、二人の少女が互いを羨ましがる「羨望」。

 

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ミドリとサチ…生まれも育ちも違った正反対の二人。

 

孤独なミドリと既婚者のサチ。幸せなのはどっち?

 

 

配役:ミドリサチシンタロウマナト 
人数:女性二名(メイン)・男性二名(サブ)
合計:男女四名 
予想時間:20分
 
 
 
(使用したら聞かせてくれると、嬉しいです)※強制ではありません
 

twitter.com

 

 

 

 

 あの子は言った。


「自由で羨ましい」


は?誰が羨ましいって?

サチは、私が欲しいもの全てを持っていた。


仲の良い家族、素敵な彼氏、たくさんの友人。

私は、何一つ持っていない。

自由なのは、誰からも心配されていないだけ。

私は、高校を卒業してからはアルバイトに励んだ。


そして、二年の月日が経った。

フリーターという名のない者のまま……

大学に行ってない者の宿命なのだが、就職か結婚かをかんがえる時期は常だ。


夢もなく、彼氏もいない私にはどちらも何もない気がした。


追い討ちをかけるように、サチは結婚報告をしてきた。


「ミドリ、私ね、結婚することになったの」


私にはどうでも良いことだと思った。


なぜ、友人であるサチにこんなに冷たいのか自分でもよくわからなかった。


サチと私は、久しぶりにカフェでモーニングタイムに食事をした。


サチから誘ってきたのだ。


バイトがある私は、バイト前に朝食がてら、サチの話に耳を向けた。


サチは私に申し訳なさそうに、目を逸らしながら、結婚のことを話している。


私にはそれがまた憎たらしかった。


嬉しいんでしょ?


ならなぜ、幸せそうに話さない。





ミドリがいつも羨ましくてしょうがなかった。


クールで美人で、いつも一匹狼で。自由。


なのに、なんであんなにいつも不服そうなの?


何がそんなに気に食わないの?

 

 

……(間)

 


「サッチャン、なんかあった?」


私が下を向いてフォークを力強く握っていることに気付いたのは、彼氏のシンタロウ。


シンタロウとはもう長い付き合いだ。


「ううん、何でもないよ。美味しいね、このパスタ」 


微笑みながらそう言うと、シンタロウも微笑んだ。


いけない、今日はシンタロウの家でご飯を食べていたのだ。


シンタロウの前では、“本当の顔”を見せてはいけない。


「サチ、話があるんだけど」


きた、今日は絶対そんな気がしていた。


この日を待っていた。


この日を……



「サチ、結婚しよう」


シンタロウが真面目な顔をして、目の前にキラキラの結婚指輪を差し出す。

私のミッションは成功した。


ミッションコンプリート。


これで自由になれる。


私は目頭が熱くなるのを感じた。


別に、シンタロウじゃなくても良かった。


シンタロウのことは嫌いではない。


顔がそれなりにかっこよくて、

 

私が専業主婦でいられるくらいの年収で、

 

優しければ、それは誰でも良かった。


シンタロウを抱きしめて微笑む。


「ありがとう、シンちゃん。私、とっても幸せだよ」





「話、終わったなら、私は帰るよ。お幸せに」


サチに言い捨てるようにお会計を済まして、足早に店から出た。


もうためだ。


これ以上サチと話していると憎悪で心が汚れる気がした。


なぜ、私はこんなにもサチに対して憎しみを持つようになってしまったのだろう。


なぜ、こんな気持ちにならなくてはいけないのだろうか。


そう考えながら、今日も私はバイト先へ向かった。


風がとても心地よい。


私の汚い心を浄化してください。


サチのことを好きだったあの頃のように。

 

 

__サチとの出会いは、中学生のとき。

 


一人ぼっちの私に声をかけてくれたのがサチだった。


別に私は一人でも良かった。


孤独にはなれているから。


でも、サチは笑顔で近づいてきた。


それが私にはとても怖かった。


なんのメリットがあって私に近づくのかわからなかったけど、

 

サチいわく、友だちになるのは損得関係ないらしい。


私は損得でしか人生を歩んでこなかったから、信じられなかった。


サチは誰にでもいい顔をするから、一部の女子には嫌われていた。


でも私はそんな八方美人な彼女が好きだった。


私にはできないから。


そういうと嫌味っぽく聞こえてしまうが、これは褒めている。


誰がどう思うのかは勝手だが、

 

笑顔を誰にでもふりまけるのは簡単なことではないということを私は知っている。

 




ミドリは私の憧れだった。


思えば、私には友だちがたくさんいた。


それは男の子ばかりだったけど、私にはとても大切な友だちだった。


ミドリのことを好きな男の子はその中にもたくさんいた。


ミドリは男の子なんかに興味なさそうだったけど、

 

私はみんなに好かれるために頑張っているのに、

 

涼しい顔をして、男の子に好かれるミドリが、妬ましかった。


……羨ましかった。

 

私は、嫌われたくなくて、男女平等に仲良く接していたつもりだった。


でも、女子は気に食わなかったみたいで、私は嫌われた。


そんなとき、ミドリだけが普段通りに接してくれた。


それがどれだけ救われたのかは、私にしかわからないだろう。






サチにはいつも彼氏なのか、友だちなのかわからない男の子が周りにたくさんいた。


私は男の子が苦手。というか嫌い。


男は容姿で人を判断するからだ。


私は決して美人ではないのは知っている。


でもブスではない。


……と思う。

 


サチは、愛嬌もあって可愛くて、生まれ変われるならサチみたいな女の子になりたい。


そう思ってはいるけど、なかなか変われないのが人間なのだろう。


サチには友だちがたくさんいるから、私なんてすぐに忘れ去られてしまうだろう。


卒業と同時に私とサチの仲は断ち切られるだろう。


そう思っていた。





ミドリの美しさは私が一番知っているつもりだった。


ミドリを紹介して欲しいと言う男はたくさんいた。

 

だけど、どの男もミドリにはふさわしくない。


お前なんかがミドリと並べるわけがない。


男子からそう言われていても、私はミドリを紹介したことはない。


ミドリは、そんなチャラチャラとした男は選ばない。


ミドリが選ぶ男はきっと、爽やかな印象の心の底から優しい美しい好青年だろうな。


……悔しい。

 

 

勝手に想像して悔しがるなんて馬鹿みたいだ。


そう思っている矢先に私が出会ったのがシンタロウだった。


シンタロウは、私より五歳年上の会社員だ。


仕事のことはよくわからないけど、お金は持っているだろう財布と時計に車。


私は人よりもそういうセンサーが働く。


シンタロウとの出会いは、映画館だった。


私もシンタロウも一人で映画を観ていた。


映画を終えて、外に出たとき、目が合った。


こんな運命的な出会いだったのに、

 

このとき私の中に、ミッションが命じられた気がした。





サチは卒業してからもよく遊びに誘ってくれた。


サチのおかげで孤独は感じなかったけど、

 

サチがいるから焦燥感も味わうことになるのだ。

 

大学にも通っていて、彼氏もいるサチは

私の悩みなんてわからないだろうと半ば諦めていた。


感じなくてもいい感情を抱きたくない。


面倒くさいし、そんなことで疲れたくない。


私はこれからどうしたら良いのだろう。


資格でも取って就職してしまおうか。


婚活サイトに登録して、若さだけを売りにして、適当に結婚してしまおうか。


何事もそんな上手くいくはずはない。

 

私の願いは何なのだろう。


夢を追い続けて叶える気持ち良さはどれほどなのだろう。


好きな人と結婚できる幸福感はどれほどなのだろう。


私はこれからも、夢もなく、好きな人も出来ず、

 

このまま一生進歩のない日々を過ごしていくのだろうか。

 

そう思うとどうもやりきれない気持ちになってしまう。





シンタロウは、良く言えば運命の人だし、悪く言えば、私にカモにされた男だ。


はたから見れば、私の物語の王子様のようでもあるが、

 

私から見てみれば、ただの脇役にすぎない存在。


シンタロウが私を好きになって、結婚でもしてくれれば、

 

私はミドリへの妬ましく降り続ける黒い雨が青空のごとく晴れるような気がした。


そう簡単にシンタロウが私なんかを好きになるわけないと思ったが、

 

シンタロウも所詮ただの男子と同じ男性であり、男だった。


ミドリから羨ましいと感じてもらえればそれだけで良かった。


ミドリからの羨望の眼差しを浴びたかった。


それだけもう、やけになっていたんだ。 






バイトが終わり、真っ暗闇の家に帰る。


「ただいま」


そう一人つぶやき、

 

コンビニで適当に買ってきたおにぎりを食べながらスマホをいじる。


ソーシャルネットワークサービスを見ていたら、

 

キラキラ輝いている男子高校生を見つけた。


三歳年下だったが、私の三年前はこんなにもキラキラしていただろうかと考える。


半分も食べることのできなかったおにぎりをテーブルの上に置き、

何を思いついたのか、気が付けば三歳年下の男子高校生にメッセージを送っていた。

__こんにちは、毎日楽しいですか? 


どうせ返事は返ってこないだろうと思って、お風呂に入り、眠りにつこうとした。


しかし、すぐにその返事は返ってきた。


__楽しいですよ! メッセージありがとうございます! 


驚いた。


即レスでメッセージが返ってきた。


私は舞い上がって、こんなメッセージを送ってみた。

 

__会えませんか?


……完全に調子に乗った。


でも、絶対に会えないと思ったから送って見たのだ。


私のソーシャルネットワークサービスの写真は、愛犬の写真だ


投稿も愛犬のみの写真ばかりだった。


男子高校生が顔を見ずに会ってくれるわけがない。


怪しまれて終わるだけだ。 


__この辺に住んでいるんですか?高校生ですか?

 

あなたのことをもっと知りたいです。

そんな返答が返ってくるとは思わなかった。

私は怖くなって、返事をするのをやめた。

最近の高校生は、ネットで連絡を簡単に取って、興味を示してくれるのか。

嬉しいような、怖いような、心配になった。

しかし、彼とのメッセージは私に変化をもたらした。

試しに送って見たメッセージが、

 

まさか返信を得ることになるとは思ってなかったからだ。


行動を起こした者には、何か得るものがあるのかもしれないと感じることができた。





シンタロウと結婚して、晴れて憧れだった専業主婦になった。


ミドリとは、あのカフェ以来会ってはいない。


せっかく結婚報告をしたのに、ミドリの感情が読めなかった。

 

私も、ミドリに羨ましいと思ってもらえるかもしれないってときに、

 

シンタロウとの結婚が何か悪いことをしてしまったことのように感じてしまった。


それがミドリに懺悔(ざんげ)をしているような気持ちになって、

 

自慢げに報告することができなかった。


それがどうも心残りだ。


私が連絡しなければ、ミドリと会うことはもうないだろう。


高層マンションのベランダから青空を見てふと思う。


__私はこれで良かったのだろうか。


言ってしまえば、ミドリのために結婚したようなものだ。 


ミドリからの羨望の眼差しを浴びるために……


いやいや、そんなことはない。


もう就職しなくても良いこの環境に、シンタロウに感謝しなくてはならない。


シンタロウとの子どもを産んで、幸せに暮らそう。


シンタロウとの子ども……


不安になってきた。


本当にこれで良かったのだろうか。





私は、三歳年下のマナトが気になってしょうがなかった。


高校生の彼に恋をするなんて馬鹿げているだろうか。


たった返事をもらえたくらいで恋をするなんてバカみたい。


そう思いながらも、気がつくと数日放置していた彼のメッセージに返事をしていた。


『この辺に住んでいるんですか?高校生ですか? あなたのことをもっと知りたいです』


何回も見てにやけてしまう。

あなたのことをもっと知りたい…か。

 

えっと、私からメッセージを送ったのにも関わらず、

 

返信が遅くなってしまって申し訳ございません。


私は20歳のフリーターです。

 

そんな風に返事をいただけるとは思わなかったのでとても嬉しかったです。


堅苦しいかな……


でも私にはこれが精一杯だった。


でも、数時間後。


__僕より年上の方なんですね!

 

ミドリさんってとっても真面目な方なんですね。

文章から伝わります。

 

俺、毎日楽しいですか?って

 

ミドリさんから聞かれるまで毎日を楽しいって思ったことなかったんです。

 

でも、あの時聞かれてすぐに楽しいと思えたこと、

 

聞かれるまで気づかない思いを気づかせてくれたのが嬉しくて。

 

ミドリさんってどんな人なのかなって気になってしまいました。


……素直な子。


本当に私には似ても似つかない。


そう思いながらも、私は次のメッセージを打ち込んでいた。


__年上と言ってもそんな変わらないですよ。真面目だとはよく言われます。


そう言ってもらえるとメッセージを送って良かったなと思います。


優しいですね。何通もメッセージしていただいてありがとうございました。


私は一方的に終わらせた。


これ以上関わったところで何も変わらない。


そう思った瞬間、スマホが鳴った。


__会わないんですか?俺、もうミドリさんに興味津々なんですが。



胸がドキッと心臓が震えた。

 

 

……そうだ、私が会えませんか?って言い出したんだった。


どうしよう。


急いで文章を打ち込んでいく。


__ごめんなさい。あの時私どうかしていて。

顔も見えない相手に会いたいとかどうかしていました。

君も知らない相手に優しく返事をしたらダメですよ。

なんて、私が言える立場じゃないですね。

本当にごめんなさい。


はぁ。


何をしてるんだか。


やっぱり恋愛は疲れる。


神様は私にずっと孤独でいろと言っているに違いないんだ。


母と父は私が小さい頃に離婚していて、母はいつもどこにいるのかわからない。


テーブルの上にお金だけが置かれている毎日にはもう慣れたけど、

 

感情が揺れ動くのにも面倒くさく感じる。


でも……胸のドキドキと彼のメッセージを思い出す。


こんな風に誰かとメッセージを送り合うのは本当に久しぶりだ。


何もかも面倒くさがってしまう私はよくやった方じゃないか。


なのに、なんでこんなにも寂しいと感じてしまうのだろう。


バカみたい。


涙が出そうになるのを堪えながら、洗面台の方へ向かう。



……ピロンッ♪(効果音を付ける・または読まない)


部屋の奥でスマホが鳴った。

メイクを落としている手を素早く洗って、スマホを見る。


__僕、マナトって言います。
この近くの高校に通っていて、血液型はO型。誕生日は2月1日の17歳。

 

来年18歳になります。

 

ミドリさんが気になることがあれば、教えます。

 

一度だけ会ってみませんか?

 

週末、駅前で待ち合わせして怪しいと思ったなら僕を見て帰ってもらっていいです。

 


マナトという名の彼は、自分のプロフィールと一緒に私にこんな提示をしてきた。


内心、とても嬉しかった。


こんなに心が揺れ動いたことはあっただろうか。


私は優しい提示をしてくれた彼の誠実さに乗ることにした。



そして、それから

 

何回もデートを重ねてマナトからの告白で私たちは付き合うことになった。

 

 

そんなマナトと交際するようになったのは、

 

生きているだけで良いことが起きるのかと奇跡のようなものを感じることができた。

 


心に余裕ができると、ふと、サチのことを思い出した。

 


今なら、サチの結婚を心から祝福できるかもしれない。

 


サチの話を存分に聞いてあげよう。

 


そして、マナトのことを話そう。

 

 




ミドリからの連絡には驚いた。

 


何を言ってくるのか不安に思いながら、とりあえず会うことにした。

 


結婚したら、男友達と会えなくなってしまったので、暇だった。

 


別にシンタロウは男に会うなとか細かいことを言ってくる男ではない。

 


むしろ、友人を大切にしなきゃとか言ってお金までくれちゃうだろう。

 


でも、こんなにいい生活をさせてもらっているのに遊び歩くなんて良心が痛む。

 


毎日が暇ではあるが、これが私の代償だと思った。

 


そんなことを思っている矢先にミドリからの誘い。

 


暇じゃなかったら、会わなかった。

 


会わなきゃ良かった。






「サチ、元気?」

 


「元気だよ。珍しいね、ミドリから会おうなんてさ」

 


前に来たカフェでランチをすることにした。


サチは、前より顔色が悪いように見えた。


でも、サチの左薬指のキラキラした結婚指輪を見ても何とも思わなくなっていた。


「結婚生活どう? 上手くいってないの?」


私はサチを心配して言っているつもりだった。


「は? 上手くいっているけどなんで?」


サチはいつものより甘いクリーミーカフェオレをストローで混ぜながら強めな口調で言い放つ。



「顔色が悪いから、疲れてるのかなって」

 


「疲れてるわけないじゃん、専業主婦だよ?

ほんっとうに暇すぎて、ミドリから連絡きて良かったよ」

 


サチは、イライラしているように見えた。

 


サチ、なんか変わった気がする。

 


どうしたんだろう。






ミドリは、一層美人になっていた。

 


生き生きしているようにも見えて、何か良いことがあったに違いないと感じた。

 


それを聞きたくなかった。

 


ミドリの幸福自慢は聞きたくない。

 


なのに、ミドリは、結婚生活に触れてきた。

 


私が話し始める前に。

 


前は、聞くそぶりも見せなかったくせに。

 


いきなりなんなの。

 


私は帰りたくてしょうがなかった。

 


怖かった。

 


ミドリに対して敵意むき出しだっただろう。

 

 

私にもなぜミドリがこんなに憎いと感じるのかがわからなかったけれど、

 

 

ミドリには、もっと努力して欲しかった。

 


簡単に幸せにならないで。

 


簡単に私を追い越してこないで。

 


ミドリは何も頑張ってないじゃない。

 


私をこれ以上惨めにさせないで。



 



サチがイライラしているから、マナトとのことは言いづらくなってしまった。

 


もう、サチとは仲良くなれないのだなと直感で感じた。

 


これで終わりなのだろう。

 


でも、最後に言いたかったことを言おう。

 


これだけは伝えておきたい。

 


「サチ」

 


「何?」

 


「私、ずっとサチのことが羨ましかった」

 


「…え?」

 

 

「家族との仲も彼氏も友達も多い、サチが羨ましかったの」

 

 


サチは黙ったまま俯いている。

 

 


私は一度話し出したら止まらなくなっていた。

 


「サチが、私によく自由で羨ましいって言っていたよね。私にはそれが嫌味に聞こえた」

 


まるでそんなことはないとでも言いたそうなサチの顔。

 


「サチが言う私の自由ってどういうことか知ってる?

 

聞こえは良いけど、何も大切なものがなくて、

 

誰からも心配してもらえない孤独な自由なんだよ」





ミドリと気まずい雰囲気になってしまった。



もうこのうーんと甘いカフェオレを飲んだらお会計を済まして出よう。

 


そしてもう会わなければいい。

 


そう考えているとミドリが話しかけてきた。



ミドリからの告白を受けて私は激しく動揺した。

 


ミドリが私のことを『羨ましかった』と言った。

 


私がミドリから浴びたかった羨望だ。

 


なのに、正直思ったほど嬉しくはなかった。

 


なぜ?

 

 

私は嫌味ではなく、本当にミドリの自由なところが羨ましかった。

 


努力もせずに人から好かれて、何をしても美人だから許される。

 


私がどれほど努力して人から好かれようとしたと思っているの。

 


「ミドリは、何をしても許されるの」

 


「え?」

 


ミドリは、綺麗で艶やかな黒髪を耳にかけながら聞き返してきた。

 


そんな仕草に余計に苛立った。

 

「ミドリは、贅沢だよ。これ以上何を望むの?

自分から努力してきた?

行動してもしてない人に何も言われたくないよ」

 

正直な気持ちだった。

 


ミドリは、何も努力していないくせに文句を言うからだ。

 


いつもいつも、努力をしないで手に入れる。

 


何もしないで手に入れられないことには文句を言う。

 


何も努力をしていないくせに

 

愛されていることを知ろうともしないで、

 

自分から歩み寄りもしないで文句ばかり言うミドリに腹が立った。





サチの言葉にマナトと出会う前の情景が浮かぶ。

 


私はマナトと出会う前は、確かに全てを諦めていた。

 


自分から行動して手に入れた今の恋愛は、

 

前の絶望的な気持ちは消え失せ、生きる希望さえ沸いた。

 


紛れもないそれは、あのときメッセージを送った自分の行動力だった。

 

 

私はサチの言葉に図星で何も言い返すことができなかった。


「サチの言っていること、今ならわかるよ。

 

私も最近自分から行動して、付き合えた彼氏がいるの。

 

頭も良くないし、モテるわけでもないのに、

 

自分から行動しないで手に入れようなんて傲慢だね」


サチは、私の言葉に驚いていた。



でも、何も言わなかった。

 


サチを羨ましがってばかりいた私はもういないよ。






ミドリに彼氏ができた。

 


もう自分でもこの気持ちがわからなかった。

 


私はどうしたらいいのだろう。

 


ミドリが不幸になれば、私の気持ちは晴れるのだろうか。

 


ふとシンタロウのことを考える。

 


シンタロウはどうすんのよ。

 


何のために結婚したと思ってるの。

 


もう、なんか、全てが嫌。

 


「へー彼氏できたんだ。おめでと」

 


あ、ものすごく棒読みになってしまった。

 


結局自分に彼氏ができたから、私のことを羨ましかったなんて言えるんだ。

 


ミドリと話していると自分のことを嫌いになりそうだ。





サチは冷たかったが、祝福をしてくれた。


「ありがとう、サチ。

 

サチに嫉妬することはあったけど、

 

本当に羨ましかったから、

 

これから私もサチみたいに結婚できるように頑張るよ。

 

彼は高校生だから、就職もすることにしたんだ」

 

 

マナトと長く付き合っていくにも、

 

就職を考え、バイトをしながら勉強することにした。

 


本当に私の生活は百八十度変わった。

 


考えも、未来も明るくなった。

 


全てはマナトのおかげである。





ミドリは、嫌味ではなく本当に私を褒めてくれているように感じた。

 


とても幸せそう……

 


私の行動全てが馬鹿らしく感じてきた。

 


ミドリに羨ましいと思って欲しいがために結婚したことは、墓場まで持っていこう。

 


彼氏が高校生だということに驚いたが、別にもう幸せなら何でもいいように感じた。

 


ミドリは変わった。

 


私も変われるかな。

 


ミドリのように。

 

 

参ったな、結局私が一番ミドリに憧れを持っていたのだ。

 


羨ましいのは、憧れていたから。

 


頭の片隅に、シンタロウの顔が浮かんだが、忘れることにした。

 


そして、帰ってシンタロウに今日のことを話そう。

 


本当の私の姿を見せてもシンタロウは私のことを好きでいてくれるかな。

 


ミドリのように美しい容姿ではないけど、料理だけは得意だから。

 


美味しいご飯を作って、今日のことを話そう。





サチにマナトのことを話していたら、気まずい雰囲気はいつの間にか消えていた。

 


私が今までサチに冷たく当たっていたのだと心から反省した。

 


また会ってくれるかはわからないけど、やっぱりサチと話すのは楽しかった。

 


久しぶりに学生の頃のような楽しい気持ちで帰宅した。

 


家にはいつものように一人だったが、サチとマナトのおかげで今は寂しくないよ。

 


心がとても満たされている。

 


今日のことをマナトに電話で報告をした。

 


「良かったね。ミドリちゃんの気持ちがサチちゃんにも伝わって」

 


「うん、私がどれだけわがままで悲劇のヒロインをしていたのかがよくわかったよ。

 

捻くれ者で自分のことしか考えてなかった」

 


「うん、ミドリちゃんって素直じゃないし捻くれ者だよね」

 


「……うん、ごめんね」

 


「あれれ?なんでここでいきなり素直になるんだよ。

ミドリちゃんにはもっと自信を持って生きて欲しいんだよ」

 


そう笑いながら慰められる。

 


三歳も年下なのに、年下だと感じさせない心の広さに感心する。





「サッチャン、ただいまー」

 


シンタロウと住んでいるのは高層マンション。

 


私の憧れていたマンションだ。

 


出会いは最高で最悪な始まりだったが、

 

こんな私の茶番に付き合ってくれたシンタロウには

 

ほんっとうにに心の底から感謝でいっぱいだ。



今日はシンタロウを想って、シンタロウが好きそうなイタリアン料理を作ってみた。

 


もう三年の付き合いになるというのに、シンタロウが好きなものを私は知らない。

 


それほどシンタロウ自身に興味を示さなかった証拠だ。

 


でも、シンタロウは何でも美味しいと食べてくれた。

 


私はそんなシンタロウの優しさにいつも甘えていたね。

 
 

「おかえりー」



「今日はとっても豪勢だね! 何かあったの?」

 


「日頃の感謝を込めて作りました〜」



シンタロウに今日のことを話した。

 


「サッチャンは、ミドリちゃんのこと本当に好きなんだね」

 


シンタロウにそう言われて、驚いた。

 


私がミドリのことが好き?

 


私がフリーズしていると、シンタロウは続ける。

 


「サッチャンはさ、

 

ミドリちゃんの自由で美人なところに惚れていたんだよ。

 

憧れてたんだろ? そこにとっても愛を感じるよ」

 


そうやって言えるシンタロウに好感を持った。

 


結婚をしておきながら、好感とは変な感じだが。

 


「そっかー…ミドリのことが好きで、

 

好きすぎて私はおかしくなってしまったのかもしれない」

 

 


「でも、珍しいね。サッチャンから自分の話をするの」

 


シンタロウは、嬉しそうに私の作ったリゾットを口に運ぶ。

 


私はいつも自分を隠して生きてきた。

 


良いところだけを見せてきた。

 


「シンタロウは、私のどこが好きなの?

 

私、シンタロウに本音を言ったこともないし、本当の顔を見せたこともないよ」

 

……言ってしまった。

 


もしかしたら、今日で終わりなのかもしれない。

 


シンタロウに本当の顔を見せたら、離婚されてしまうかもしれない。

 


そう思うと胸が押しつぶされるような気持ちになった。

 


「うん、知ってる。

 

サッチャンがたまに怖い顔をしてる時も、俺、ちゃんと見てたよ

 

でも、サッチャンはとっても心の優しい女性だよ。それだけで十分だよ」


涙が出そうになった。

 


「シンタロウ、好きな食べ物教えて……」

 


シンタロウは、こんな自分でも好きでいてくれるような気がした。

 


私もいつの間にかこんなにも優しさで溢れているシンタロウを

 

 

大好きになっていたんだね。

 

 




五年後――

 


マナトと私は婚約をした。

 


結婚式は、マナトが大学を卒業してからする予定だ。

 


無事、就職先も決まったようで私たちはとても安心した。

 


私は資格を活かし、管理栄養士になった。

 


夢もなかった私がなぜ、管理栄養士になったかと言うと、

 

将来マナトと子どもに健康的で美味しいご飯を作れるお嫁さんになりたかったからだ。

 


マナトは、私の夢を全て叶えてくれた人。

 


いつまでもずっと大切にしたい。



サチはシンタロウさんとの子どもを産んだ。

 


私とサチはというと、たまに会う仲だ。

 


サチの母性に溢れた笑顔を見るだけで胸がいっぱいになって幸せな気持ちになる。

 


やっぱりサチは羨ましいよ。

 


大好きな旦那さんに、可愛い子どもに恵まれて。

 


私もマナトとサチのような家族を築いていけるかな。






ミドリとは、たまに連絡を取り合っている。

 


相変わらず私から連絡を取っている。

 


ミドリから誘ってくれることもあるのだが、誘い方に慣れていないようで面白い。

 


今ならミドリとはずっと仲良くできる気がする。

 


もうくだらない感情はない。

 


大切な我が子と

 

ありのままを受け入れてくれたシンタロウをこれからもずっと大切にしていく。

 

 

__


ミドリは、



サチは、

 


だ。

(ミドリとサチ、二人で一緒に)